クラムボンと蟹座そして月の話

蟹座の季節ですね。

宮沢賢治の童話「やまなし」から連想する、西洋占星術の蟹座と月にまつわるお話です。

ちょこっと涼んでいってくださいね。



二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。
『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンは跳はねてわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
 上の方や横の方は、青くくらく鋼のように見えます。そのなめらかな天井を、つぶつぶ暗い泡あわが流れて行きます。
『クラムボンはわらっていたよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『知らない。』

宮沢賢治「やまなし」より



蟹座の季節に入り暑い日が続きますが、私の頭の中には「蟹座♋️月間のテーマはサワガニ!」と、きていまして(笑)。

童話「やまなし」の『クラムボンはかぷかぷ・・・』のセリフがずっと脳内リフレインしています。


あらためて、「やまなし」を読み返してみました(青空文庫でお読みいただけます。)

サワガニの親子が谷川の底で寄り添って話している様子が、とても幻想的でほのぼのとして癒されます。

特に、水の底から水面を見上げながら、外の世界が時々垣間見えつつストーリーが展開していく構図がとても美しい。地上の私たちからすると、ふしぎな非日常的世界観でハッとさせられます。



ところが、物語は幻想的な風景の中で、突然ドキリとするような展開になります。

自然界ではすぐそこにある食物連鎖の理。

その現実を目の当たりにして、カニの兄弟は最初はよく理解できずに、それでもお父さん蟹の存在、家族のあたたかさに包まれ、自然の美しさに癒されて成長していきます。



実はこの物語には、お母さん蟹は登場しません。

それは何故なんだろうとはじめは不思議に思ったのですが、あとでふと思い当たったのが、「月」の存在です。


 白いやわらかな円石もころがって来、小さな錐(きり)の形の水晶の粒や、金雲母のかけらもながれて来てとまりました。

 そのつめたい水の底まで、ラムネの瓶の月光がいっぱいに透きとおり天井では波が青じろい火を、燃したり消したりしているよう、あたりはしんとして、ただいかにも遠くからというように、その波の音がひびいて来るだけです。

  蟹の子供らは、あんまり月が明るく水がきれいなので睡(ねむ)らないで外に出て、しばらくだまって泡をはいて天上の方を見ていました。


宮沢賢治「やまなし」より



水晶の粒、金雲母のかけらが流れる水面。ラムネの瓶の月光・・・。

なんて美しい光景なんでしょう。見てみたい・・・。


このあと、またふいに外の世界から子ガニたちの目の前に飛び込んでくるものがあります。

子ガニたちは、一瞬怖い記憶を思い出し固まるのですが、今回はいい匂いのする「やまなし」でした。

やさしいお父さんに連れられて、安堵感とワクワク感の中、やまなしを追いかける3匹の蟹の親子の姿で物語はおしまいです。


子ガニたちは、次の日「イサド」に連れて行ってもらえたのかな?



西洋占星術で、蟹座のテーマは「家族・居場所・養育・感情的なつながり・根源との一体感」などが上がります。

そして、蟹座の支配星(ルーラー)は「月」になります。


まさにこの蟹の親子の物語は、蟹座のテーマにぴったりなのです。


宮沢賢治は宇宙や銀河をテーマとする作品を残していますが、西洋占星術の知識はあったのでしょうか。

あったとしても、1923年の作品ですから、まだ冥王星も発見(1930年)されていない時代ですし、情報はとても少なかったでしょうね。


物語の中で子ガニが目の当たりにする世の中の残酷さ。見えない世界の恐怖。

でも、お父さんの言葉で少しづつこわばりがほどけていく。

目に映る景色の美しさは、恐怖の中では分からなかったとしても、あとで思い出したときに印象に残っているはずです。


この恐怖と美しさの落差のあとで感じる、圧倒的な安心感。

蟹座は、子どもの頃に自分が「守られていた」というあの「安心感」を自分の中にふたたび感じるのが「テーマ」になります。


そうは言っても、子どもの頃の環境というのは人によって様々です。

子どもの頃に守られていたという感覚を「持てなかった」という方もいらっしゃるかと思います。


実際、蟹座は「養育」がテーマにありながら、自分が養育されたという記憶はほぼない段階の星座(サイン)になるのです。

(当サイトの参考記事↓)



では、どうしたら良いのでしょうか。

ここで重要なのは、「月」の存在です。


「やまなし」の中でも、月は情景として登場するだけですが、蟹の子どもたちからは見えない遠くからでも、優しくやわらかな光を谷川の底に届け、そして最後には「やまなし」という贈り物まで届けます。


何も言わないけれど、静かにそっと谷川の底の蟹の家族を見守る白い月。

「月」は母親も象徴します。


夜空に浮かぶ「月」は私たち地上の営みをずっと静かに見守り続けていてくれる母親です。

昼の時間に生きる私たちは、ふだんなかなか月を意識することはないかもしれません。


でも、どうしても困ったとき、自分ではどうにもできないような深い悲しみに襲われたとき。

夜空の月を見上げれば、月がどんな時もずっとあなたのことを見続けていてくれたことに気づくでしょう。


月はあなたが何も言わなくても、ずっとあなたの味方です。


もし、あなたが生みの母親から愛を受け取れなかったと感じているとしても、問題はありません。


あなたの中にある月が、あなたのお母さんです。


今日からでもいいので、あなたがあなたのことを見守り、育ててあげてください。


あなたがあなたのお母さんになってあげてください。



蟹座のテーマは、あなたをやさしく見守ります。


ぜひ、谷川の底の蟹たちといっしょに、クラムボンややまなしを見つけてくださいね。


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